SANOGRAPHIX Blog

京都を拠点に活動する佐野章核 (sanographix) の個人ブログ。日記、webデザイン、読書、写真など。

【追記:購入可能】「ウェブじゃない人のためのウェブデザイン本」という試みについて

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12/31のコミックマーケット91で頒布する『konel.mag Issue 5 』の新刊情報を公開した。

konel-works.com

2017/01/01 追記: 購入可能です

COMIC ZIN 各店舗・Web通販にて12/31より委託販売を開始しています。今すぐ買いましょう

裾野

本誌は、いわば「ウェブ じゃない人 のためのウェブデザイン本」である。

2年半konelで活動してきて、ようやく作るウェブの本なのだが、頃合いを見計らううち、ここまでかかってしまった。その背景として、日頃感じている「ウェブデザインの人気の低さ」がある。

一般的に、ウェブデザインは人気のある仕事(趣味)と思われている。が、僕の認識では逆で、世間の期待値を下回る人気であると思う。しかも数年前からその傾向がある。僕は大学で比較的新しく開設されたデザイン科に在籍していたが、それでもウェブデザインを趣味で少しでもかじっている学生は少数派で、興味のある人の割合は体感で1割いるかいないかくらいだった。卒業後も所用でたびたび大学に顔を出しているのだが、状況はほぼ変わっていない。他の美術大学や若者のコミュニティに出かけたときも、程度の差はあれ似たような状況だった。僕はこれに強い危機感を覚えている。

ツールに乗っかる

前置きが長くなった。本誌では、「ウェブデザインの技術に自信がなければ、それを補完する各サービスにガンガン乗っかればよいじゃないか」と一貫して主張している(ここでいう技術は主にコーディングスキルを指す)。僕もウェブデザイナーなので、この主張には正直かなり抵抗があった。僕だけかもしれないけど、なんとなく、変なホームページビルダーみたいなので作ったサイトより、丁寧に手で書いたほうがセマンティックなサイトが作れて良い、みたいな意識があると思う。セマンティックじゃなくなるのはツール側の問題であるから、変じゃないツールを使えばよいのだけど、それとはやや別のところに「手間をかけたほうが偉い」みたいな、おなじみのプライドというか、意識があると思っている。そして、通常の学習フローで、ウェブサイトを作りましょう、ウェブデザインを始めてみましょう、となると、手間の部分に直撃することになる。それを乗り越えなければ技術は身につかないのであるが、そこで足踏みさせてしまっている状況がいまの状況なのであり、結果としてウェブサイトを持たない、ウェブデザインに興味を持たれないことに危機感を覚えているのである。そもそも、技術はウェブサイトの価値を高めることはあれど、結局のところコンテンツ抜きにはサイトの価値を測ることはできない。スキルの優劣で、ウェブサイトの良し悪しを判断すべきではない。このような、ウェブデザインに過剰に振り切らずにウェブサイト制作を俯瞰して語る本は、観測範囲ではあまりない。

本誌で特集したこと

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本誌の前半は「ポートフォリオサイト制作フロー」と題した特集を組んでいる。一般的なウェブデザインの本と違うところは、前述の「技術はツールに乗っかって補完する」方針により、制作フロー内にコードを書く場面が一切出てこないことだ。TumblrやWixのような定番サービスからAdobe Portfolioのような新しいものまで、執筆時に各サービスを実際に試してみて特徴や使用感をレビューした。ウェブデザイナーなら普段Wix触る機会などほとんどないと思うが、一歩引いた目で使ってみると、はは〜んこういう実装なのね、みたいな発見があっておもしろい。そして、それ以外の項目「構成・主題を決める」「サイトへ集客する」「公開後に改善する」などは、基本的に自分が普段趣味や仕事でウェブサイトを作るときと同じフローで解説してある。つまり、技術面だけツールでリプレイスしたかたち。

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別の特集では、ゲスト9名にインタビューを行い、各々のウェブサイトでこだわっている点や運用のことなどを伺ってきた。ここでのゲストラインナップにもこだわりがある。一般的なウェブデザインの本であれば、技術的に高度なことやってるとか、開発者が真似したくなるような技術を有したクリエイターが紹介されると思う。しかし本書では、ご本人のウェブデザインスキルに 関係なく 、個性が表れたサイト/コンテンツの充実したサイトを運営されている方に取材した。何度も言うようだけど開発者のための本ではないから、ウェブを主戦場にしない人が、うまくウェブと付き合っていく方法を知ることができるようにしたい。クリエイターに改めてサイトのことについて尋ねる機会もあまりないと思うので、ぜひ楽しんでいただけたらと思う。

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そのほかの特集もいくつか用意した。

【スクショ左】僕は13年間こういう感じでブログを書いているのだけど、それによって思うところがあるので、エッセイを書いたりした。

【中央】「既存のサイト(テンプレート)をちょっとカスタマイズしたい」という時に使えるCSS集。ツールから外れたカスタマイズをちょっとしたいときに急にCSSをイチから覚えることになるのがハードルが高すぎる、という課題意識はある。ただ、現時点でウェブデザインっぽいことをやろうとするときに避けて通れない道ではあるので、せめて「基礎から覚えたくない人のための最低限の解説」をしたいと思った。本誌で一番難航した。

【右】僕が趣味で開発しているIllustfolio 4(先々月リリースした)の特徴や新機能を解説した、という体裁の記事広告。Illustfolioシリーズも、本誌と同じように、ツールを提供したいマインドで作っている。勘の鋭い方ならお分かりかと思うが、本誌とIllustfolio 4の制作は平行して行っており、本企画をウェブと紙の双方で展開したい意図がある。このせいでスケジュールがいつもよりきつくて正直つらかった。


2011年から同人誌を作っているが、ウェブの本は意図的に避けてきた。日頃ウェブデザインに触れていると、思うところがありすぎてまとめきる自信がなかったのだ。TumblrテーマのIllustfolioやTokusetsuを作るなかで、この方向性で掘り下げるのならアリかもな、と感じて実現できた。

インターネットは個人が活躍できる場であると思っているから、個人がウェブサイトを持って活動していくことを推奨していきたい。本誌も、古き良き「ホームページをつくろう」を「ポートフォリオサイトを持ちましょう」と言い換えたようなものだ。そういう世界観が好きなのだ。個人が主張しないと、インターネットはどんどんビジネスの色が強くなってしまうと思っている。ビジネスも必要であるからバランスが大事で、バランスが狂ってしまうのは寂しいと思う。

ウェブサイトを持って活動することを、手の届かない技術と感じてほしくない。もちろん、要求される技術が年々高度化していることは理解している。また、技術的に高みを目指すことには意味があって、僕もよりよい技術を身に着けるべく日々ウェブサイトと接している。しかし、それで限られた人しかコンテンツを発信できないのでは元も子もない。インターネットは一人ひとりの情報発信でより良い場所にできるから、ツールで代替可能なものは代替していこうじゃん、ということを言いたかった。

コミックマーケット91・3日目(2016/12/31)東W-47a もしくは COMIC ZIN各店・Web通販で頒布します。よろしくお願いします。