コミックマーケット94新刊情報を公開した。結論から言うと頒布物は 賞状 なんだけど、突然賞状つくることした理由を書く。
新刊の詳しい内容は告知サイトをご覧ください。
あPDFか…といわれるPDFをコミケで売りたい
弊サークル konel の同人誌は、ごく一部を除き基本的に全号PDF版を作成し、販売している。PDF版はBOOTHやSTORES.jpで販売しているほか、物理書籍を買った人には付録として無料でダウンロードできるようにしている。PDF版は季節問わず販売することができるし、付録のPDFダウンロードも好評なので、こうした試みを3年ほど続けている。
それをふまえて、「もし同人誌をPDF版のみ頒布することにしたらなにが起こるだろう?」という構想が以前からあった。サークル側にとっては、在庫リスクがなくなるし、イベントの荷物も減らせるなどのメリットを享受できる。さらに、コミケの宅配物受け取り手数料が5倍に値上がりしたことも、決断のきっかけになった。値上げ自体には反対していないが、今までよりは宅配搬入に慎重になるなあとは正直思う。
PDF頒布を実現するには、いくつか検討すべきことがある。まず、同人誌の電書版が一般に受け容れられていることは、既刊販売実績や世間の電子書籍の流れから問題ないと判断した。しかし、次に検討すべき「コミケにわざわざ来るような層が本当にPDFを買いたいのか」については、問題ないとは思えなかった。なぜなら、過去のイベントで「既刊は在庫切れでPDF版ならあります」と案内したとき、参加者の反応がすこぶる悪かったからだ。そりゃそうだよなという感じ。
そこで、PDFを頒布するのではなく「買う体験のついでにPDFがついてくる」見せ方にすれば、酷暑のなかコミケに出向いて手に入れる価値が損なわれるのを少しは防げると考えた。いままでのPDFとおなじ頒布方法でよければ、最低限QRコード*1を何かに印刷すれば成り立つ。ノベルティとの抱き合わせを画策してマグカップや扇子の印刷費を調べていたところ、偶然「賞状」に辿り着いた。別になにも隠してないからいいんだけど、グラフィックの賞状って納期も早いし印刷費めちゃめちゃ安いんだよね。金刷りで高級感もある。
賞状にピンときた理由はほかにもあって、賞状に大抵押されてるハンコ、これQRコードに見えませんか。僕は見える*2。さらに、賞状を渡されたら誰でも無闇にめでたい気持ちになれるし、物理的に会場で手渡すことへの意味も持たせられる。カネで賞状買ってなに表彰するんだよって感じだけど、「わざわざお越しくださったことへの感謝状」にしてしまえばいい。もう賞状しかないっスね。
同人誌に名入れする
賞状に絡めたギミックとして「購入者の名前をその場で賞状に手書きする」というのを考えた。賞状といったら名前でしょ感。たぶん書ける枚数に限界があるので、告知サイトを見た人だけに案内することにした。ところで、「読み終わったあと売りたいから」電書ではなく物理書籍が欲しい人が一定数いる。僕もTVゲーム売りたい派だからパッケージ版買いたい気持ちはわかる。なので、ふつうの冊子の形態では名入れオプションは成立しない。賞状なら売ろうと考える人が激減するだろうから(というか店側がこんなもの買ってくれるのか?)、名入れしてもオッケーと考えた。そのぶん価格は安くしていて、既刊は通常1部500円のところ今回は300円にした。
どう転ぶか
一方、デジタルデータ特有の新たなリスクとして、非正規ルートで再配布されるリスクがある。まだ蓋を開けてもいないからどう転ぶか分からないが、いつもの理屈でまあいけるでしょと思っている。我々の本は二次創作でもスケベ本でもないためインターネットにそもそも需要がそんなになく*3、過去3年間とくにそれでトラブってないよね、あとイベント終了後すぐWebで販売開始予定で、音楽のダウンロードもそうだけど充分安価で簡単に入手できるのであれば正規のルートで買うよね、とかそういう理屈。もし予想が外れて滅茶苦茶になってもそこまで重大なリスクでもないだろ、くらいの気持ちでいる。
なので、本来はちゃんと認証の仕組みなりを用意すべきで、決して万人にはおすすめできない。調べてみたら同人音楽やゲームではダウンロード頒布が比較的浸透してきており、ダウンロードコードをカードに印字してくれる業者もあるようだ。
勝手に表彰
ぜんぜん中身の話してなかった。賞状からアクセスする同人誌だから、特集も表彰にまつわるものがいい。そこで、身の回りのものを勝手に表彰することにした。このブログでも商品レビューをしょっちゅう書いており、その延長線上にある特集と思っていただければ間違いない。どうも自分の関心がモノに向きがちなようだ。
当日どうなるはまだ分からないが、企画はまあまあ斜め上のところに着地できたと思っている。サークルブースに賞状置いてる脱力感を見に来ていただければと思います。賞状の受け取り方を忘れちゃった方向けに「それっぽい賞状の受け取り方」POPを掲示予定ですのでご安心ください。