SANOGRAPHIX Blog

京都を拠点に活動する佐野章核 (sanographix) の個人ブログ。日記、webデザイン、読書、写真など。

小型のゲーミングPCを自作すると楽しいし、数年前の常識が通用しない

2020年は自作PCシーンが大いに盛り上がり、話題に事欠かない年だった。そんな空気に感化されて、去年の11月頃、4年ぶりにゲーム用PCを新調した。

ステイホーム需要もあるのか、これまでになく自作PCへの関心が高まっていると感じる。また、PS5が品薄でなかなか手に入らなかったり、コンソール版Cyberpunk 2077が満足に動かなかったりして、PCを買いたいと考える方もいるかもしれない。

そのような、興味はあるが実際どうなのと思っている方、または数年前に自作経験のある復帰組(いわゆるSandy Bridgeおじさん)へのなにかの参考になるかもしれないので、小型ゲーミングPC自作について自分の意見を書こうと思う。

置き場がない!

PCを買うとき、自分が最も困るのが置き場所。なので、机や棚に置ける小型のサイズ(SFF・スモールフォームファクタ)で自作するのが好きだ。小型PCは組立てが難しいとか言われることがあるけど、さほど難しくないPCケースも色々出ている。

新旧のPCケース。左が新ケース「Cooler Master NR200」右が旧ケース「Thermaltake Core v1」

その組みやすいケースを探して今回選んだのが、Cooler Masterの「MasterBox NR200」だ*1

このケースの出来が良い理由は、身も蓋もないが「NCASE M1」というケースのインスパイア系だからだ。NCASE M1は精悍な外観、取り回しやすい内部レイアウトが特徴で、人気があるのも頷ける優秀なMini-ITXケース。しかし、近年のグラフィックボードは巨大化しており、NCASE M1に入らないものが多い。たとえばRTX3000シリーズのカードは大半がNGまたは装着がキツい

一方、NR200は、基本的なレイアウトはNCASE M1を強く意識しながら、長さ330mmまでのカードに対応するため、市場に出回っている多くのGPUが装着できる。また、価格も8,000円程度とかなり手の届きやすい設定になっている。いわばNCASE M1を諦めた人の受け皿として作られたような、実に計算高いケースという印象だ。ずるいぞ! と思いつつ、NCASEにない独自要素(GPUの縦置きに対応したり、ガラスパネルのオプション品があるなど)もきちんと存在するし、メンテナンスしやすさ・品質自体もよく出来ている。あと白のカラーリングが気に入った。

このケースに入れることを前提に、パーツを選んでいくことにした。

パーツリスト

今回選んだパーツは以下。

種類 名称
CPU AMD Ryzen 5 5600X
CPUクーラー サイズ 風魔 弐
メモリ Corsair CMK32GX4M2D3200C16
マザーボード GIGABYTE B550I AORUS PRO AX [Rev.1.0]
ビデオカード MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO
SSD ADATA XPG SX8100 2TB
ケース COOLER MASTER MasterBox NR200
電源 Corsair SF750 Platinum 750W

PCゲーム専用機なので、ゲームのパフォーマンスに影響が少ない部位は下位グレードのパーツを選ぶなどして価格を調整してみた*2。書き忘れたけど自分の好きなパーツを選べるのが自作PCの楽しいところだよな。

1/14追記: 値段について書けという指摘があったので計算したところ、購入当時で計206,029円(税込)でした。SSDを1TBにダウングレードするとか、GPUをRTX3070のなかでも安めのカードに変えれば20万切ったと思われる。しかし、近年のゲームの大容量化に伴い1TBでは足りないと思ったのと、GPUの静音性は旧マシンでなんとかしたい部分だったので、その観点で選んだ結果この構成になっている。また、古いPCを売ったので実質的にはもう少し安く買えている。

これをケースに取り付けるとこのようになる。

AMDなんですか

しばらく自作を離れていた人に話すと最も驚かれることだが、近年「CPUはRyzen」の流れが明らかに存在するほど、AMDの勢いがすごい。ゲームでも高いパフォーマンスを発揮すると評判のよいRyzen 5 5600Xを選んでみた。というか、それより上位モデルは即完売してしまい、発売初日に入手できたものがRyzen 5しかなかった。

CPUクーラーの風魔弐は、RedditでNR200のベスト空冷クーラーに推す声が強かったもの。クリアランスはギリギリで、空間を有効活用できてる感がすごい。ベンチマーク情報サイトを見ていると4KゲームでボトルネックになりやすいのはCPUよりもGPUなので、CPUやクーラーはこれくらいでいいかと思った。

一見すると収まってなさそうだが、きちんとサイドパネルは閉まる

品薄からの品薄

GPUにRTX3070を選んだのも、ほかが軒並み入手不能で選択肢がなかったからだ。とはいえ、GPUは値崩れが速く、あまり背伸びして上位機を奮発するのも躊躇してしまうので、悪くない選択だったと思う。パーツの中では将来の買い替えタイミングが一番近そうなので、多少ワット数に余裕がある電源と組み合わせた。

RTX3070のカードは各社から出ているが、ノイズレベルを計測しているサイトを見て、静かなMSIのモデルを選んだ。口径の大きな3連冷却ファンの見た目通りの静音性だ。これまで使っていたGTX1080のカードからは元気な回転音がしていたので雲泥の差に感じる。

ケースへの取り付けにあたっては、電源ユニットから出ているケーブルで、カードが下方向に押されてしまう問題が生じた。そのためゲーミングつっかえ棒ことサポートステイを追加で取り付けて対処した*3。組立てで難航した箇所はこのくらいだったと思う。

電源ユニットからの配線取り回し。VGA末端の垂れ下がり防止のためサポートステイを追加した

エアフロー

吸気・排気の流れを矢印で示したのが以下。上面排気は空間に余裕がなく心配だったが、組んでから2ヶ月間常用して様子を見たところ特別問題はなさそうだった。

実際は左側面からも吸気している

復帰勢向け情報

これまで2007年と2016年に2度PCを新調し*4、前回のときも常識が変わっていて驚いたけど、そこから4年経つとまたいろいろと変化が起こっていた。以下2007年時点からの変化も含めて書く。

SSDの形状

SSD、規格も形状も変わった(M.2)。新しい規格(NVMe)のほうが転送速度が速い。M.2はマザーボードに直付けするタイプなので、今回のビルドではSATAケーブル・SATA電源ケーブルを1本も使っておらず、非常にスッキリした。

BIOSじゃなくてUEFI

これはかなり昔に変わった常識だけど、初めて組んだPCで見たあの青いBIOS画面を最早見なくなり、UEFIに置き換わった。UEFIはグラフィカルなインタフェースだったりマウスが使えたり(!)するのだが、UEFIにOSをインストールすると高速起動(Fast Boot)を有効にできる点が嬉しい。Fast Bootを有効にすると、11秒程度でWindowsが立ち上がった*5

また、UEFIのメニューから、メモリは設定1つでオーバークロックできる(XMP)。もともとIntelが策定した規格のようだけど、AMD用のマザーボードでも普通に設定できた。

PCゲームの買い方と価格

PCゲームをパッケージで買う機会がほぼゼロになり、Steamに代表されるオンラインのプラットフォームで、把握しきれないほど膨大な数のゲームをいつでも買えるようになった。あと安い。Steamはしょっちゅうセールしているし、Epic Gamesストアは定価数千円のゲームを無料でばら撒いている。

DLSS最高

旧PCがGTX1080、新PCがRTX3070なので、3DMarkのスコアは約2倍に上がったが、肝心のゲームはどうか。Cyberpunk 2077で試してみた(というかCP2077のために組んだようなものだ。8年も待ち続けたゲームを堪能するために、組むなら今しかないと思った。「今は時期が悪い」と言っていられなかったのだ)。

画質設定はDigital FoundryのYouTube動画で詳しすぎるくらい詳しく解説されており、この動画の推奨設定に概ね沿いながら少し落とした設定にすると*6、4Kで30-40fpsくらいをウロウロする。うーん本当にヘビー級だ。レイトレーシングを全部切ると一気に60fpsに張り付く*7が、レイトレの有無で大きく印象が変わるゲームなので悩ましいところ。結局レイトレーシング反射とシャドウは諦めてオフ、レイトレーシング ライティングだけオンにした。レイトレーシング反射を切るだけで40-50fps程度と、設定前から10fpsほど上がったので、かなり重い処理なのだろう。

それより驚いたのがDLSSだ。これはディープラーニングを使ったすごいアップスケーリング(雑な理解)で、RTXシリーズのみ使える。また、対応するゲームも限られる。試しにCyberpunk 2077でDLSSを無効にすると、12FPSだとかゲームにならないレベルにパフォーマンスが落ちる。これを内部でもっと低解像度で描画することで一気にフレームレートを引き上げてくれるのがDLSSだったのだ。有効にしてもネイティブ4Kとほとんど違いが分からないほどうまく働いている*8。DLSS最高。また、小技的に「GeForce Experience」内の「ゲームフィルター」機能でシャープネスを上げてしまえば、より引き締まった映像になる。


自作PCは好きなケースを選べるとか、こだわりたい部分と適当でいい部分を自分で細かく反映できる点がいい。2021年はPCモニターが来る年になると思うので期待している。

*1:小型というけれどNR200は充分デカくない? という指摘があった。本文でも書いたように、これより小さいケースはGPUの選択肢が狭まるので、ゲームの性能が下がる。小型を取るか性能を取るか、どっちを重視するかは人によって考え方が異なるので、良し悪しを議論するつもりはない。ここで主張したかったのは、NR200は性能と組み立てやすさを犠牲にすることなく、現実的な省スペースに落とし込んだ絶妙なサイズである、という点である

*2:なぜこんなに電源ユニットが高いのか? と疑問に思われるかもしれない。このケースに組み込んだのは通常より小さい規格(SFX)の電源で、通常のATX電源よりも割高な傾向にある。こればかりは小型PCに必要なコストと思うしかない。ちなみに750Wクラスの大容量SFX電源が登場したのはつい2〜3年前の出来事で、これによって小型PCにハイエンドCPU・GPUを載せるビルドが可能になった。そう考えるとロマンがあると思う

*3:サポートステイは、最近のグラボが重たくて自重で垂れ下がってしまう問題に対処するものだけど、NR200ケース特有の配線事情にも有効だった

*4:その間にパーツ換装は何度かしている。たとえば2016年に作った時点ではGTX970で組み、その後GTX1080に換えた

*5:Fast Bootはブート中にDELキーを押す猶予がないほど速い。ではどうやってUEFIに入るのか……というと、なんとWindowsの設定から入れる(「UEFIファームウェアの設定」)。ちょっと奥まったところにあるが、確実にUEFIに入れるので非常に便利だ

*6:元動画ではRTX3090で検証しているため、3070では設定を落とす必要があった

*7:指摘があった通り、使用モニターの27UK850-Wは4K60Hzが上限

*8:Cyberpunkでは被写界深度の浅い映像(イベントシーン等)で背景が不自然にモニョモニョする現象が時折起こっていたことを思い出した。断言はできないが、もしかしたらDLSSの影響だったのかもしれない。いずれにせよ、DLSSのパフォーマンス向上効果はあまりにも劇的で、設定を切ることは考えられない