サイバーパンクADV『The Red Strings Club』あまりにも良かった。Twitch Prime 特典で無料でゲットしたまま忘れていたのだが、積んでる場合じゃなかった。
2人の「サイバーパンクバーテンダー」
「サイバーパンクな、バーテンダーが主人公」の属性が似ているゲームに『VA-11 Hall-A』がある。かくいう自分も「似たようなゲームかな?」と思っていたが、両者は良い意味で全く別物である。VA-11 Hall-A の優れたところは下記の通りで、
- 個性的なキャラクターとの友情
- カクテル作りが楽しい
- 百合
- 百合
対して『The Red Strings Club』は、バーテンダー要素はゲームの1フェーズに留まる。そしてこっちのほうが重要で、会話の選択肢がひたすら重い。
選択肢の前で悩む贅沢な時間
『The Red Strings Club』のストーリーは、人間の意識を書き換えるインプラントで「絶望や苦痛などの負の感情を人類から消し去る」という巨大企業の計画に疑問を抱いたバーテンダーとハッカーのコンビが、計画を阻止すべく奔走する……という話、なのだが、ちょっとしたからくりがある。主人公の1人、バーテンダーのドノヴァンは情報屋としてのスキルで「カクテルで客の精神状態を変え、情報を引き出す」能力を持っている。このカクテル作成がミニゲームになってたりするんだけど、これが何を表しているかというと「どっちも同じ精神操作じゃないの」ということだ。カクテルも投薬治療もインプラントも、やってることは同じではないのか、どこまでが善なのか。ゲームではプレイヤーの倫理観を問う選択肢が矢継ぎ早に繰り出される。考えを決めきれずに選択肢の前で頭を抱えてしまうことが何度もあった。だが裏を返せば「決めないと先が読めない」のは本でなくゲームでしか味わえない贅沢な悩みともいえる。
ゲーム中に出てくる背景がバーの店内も含めてせいぜい3, 4箇所しかないが、非常に限られた舞台でちゃんとサイバーでパンクな物語が紡がれるのが見事。そして、インプラントと並んで「AI」がかなり物語上重要な役割を担う。ネタバレになるからもう何も言えないが、これによってゲームの主軸「人間性」の何たるかを問う説得力が一層強化されているのだ。
読後感はまったくスッキリしないうえ、ミニゲームもぶっちゃけ全然おもしろくないが、この作品はそれでいい。ゲームとしての遊び心地を求めるのはお門違いだ。
もういくつ寝ると僕はレッド・デッド・リデンプション2の世界に旅立ってしまうだろうから、AAAタイトル中休みの期間にこういう作品と出会えてよかった。
こっちのサイバーパンク・バーは選択肢が手強いぞ