次世代機と向き合う前に気持ちの整理をしたい
今年はゲーマーにとってなにかと忙しい。その理由はもちろん次世代コンソールの登場と、NVIDIAとAMDの新しいGPU・CPUの投入があるからだ。おれはうっかりRyzenポチりました。追記: Xbox Series Xも届いた。
これまで色々とゲームの感想記事を書いてきて、これから先もゲームを遊んでは記事に書くと思う。一方、逆に記事の読み手となったとき重要なのが、「自分と著者の嗜好が合っているかどうか」だ。好みが似ている人の感想は参考になるというアレです。
そこで、自分がいままでプレイしてきたゲームのなかで、これは絶対に外せないと思ったものを10タイトルに絞ってみた。もしあなたと好みが近ければ、過去記事や今後紹介する記事を読むと、ゲームを選ぶ参考になるかもしれません(もし似ていたら僕に教えてくれると更に嬉しい)。残念ながら趣味が合わなければ、合わないんだなと思っていただけたらよいです。
順位にあまり、いやまったく意味はない(なぜならどれも好きだから)けど、10位からいきます。
- 10: ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド ── 今これを不自由なく書けている理由
- 9: VA-11 Hall-A ── 仲間じゃん
- 8: Euro Truck Simulator 2 ── トラック讃歌
- 7: ウィッチャー3 ワイルドハント ── 野心しかない
- 6: Gears of War ── TPSがあるじゃないか
- 5: BMS界隈(とbeatmania本家)
- 4: ソニックアドベンチャー ── 街歩きが楽しいソニック
- 3: シェンムー I&II ── 旅をするならこんなふうに
- 2: バーンアウト3 ── 当たり屋無双
- 1: ジェットセットラジオフューチャー ── ベスト・オブ・ザ・ベスト
10: ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド ── 今これを不自由なく書けている理由
かつて「タイピングゲーム」がそこそこメジャーなジャンルとして成立していた時代があったように思う。記憶にあるそれらの多くがFlash製であり、なんだかこの先のことを考えると郷愁にかられて切ない気持ちになる。そのなかでも当時ひときわ異彩を放っていて、しかも突出して面白かったのが『ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド』だった。
本作はアーケードのガンシューティング『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド2』の、攻撃手段が銃ではなくキーボードになったバージョン。それ以外はオリジナルと一緒なので、他のタイピングゲームを寄せ付けない豪華な3D表現が鮮烈だった。今になって思うと開発コスト低そうだし企画通りやすそう……とかそういう目で見てしまう。
変な語句ばかり出題されるのが特徴で、時事ネタ・脱力ネタ・自虐ネタの数々を、オリジナルの硬派なストーリーに乗せて打鍵しまくるギャップが、セガの誇るバカゲーとして堂々たる風格がある。システム的にはローマ字入力の自動判定が便利で、たとえば「つ」を打つとき tsu
か tu
かを入力中に自動で判定してくれるため、この手のゲームにありがちなローマ字入力方法の設定が不要になった。
タイピングゲームとしては難しい部類で、後半は滅茶苦茶に手強い。タイピング速度はこれでかなり鍛えられた。1面は飽きるほど見たよ……。
9: VA-11 Hall-A ── 仲間じゃん
いまインディー・ビジュアルノベルシーンは本当に活気があって、毎月のようにKickstarterで新作ゲームをバックする夢のような時間が続いている。それらのビジュアルノベルを思うとき『VA-11 Hall-A』は絶対に外せない*1。
ユニークなところは、「サイバーパンク世界のバーテンダー」をモチーフとし、そこに訪れる客のきわめて個人的な悩みや日々の葛藤が描かれる、いわば「サイバーパンク日常もの」である点。彼らはいつ暴動に巻き込まれてもおかしくない不安定な社会、激しい格差のなか、一時のやすらぎを得るためにバーに訪れる。開発者インタビューによると、これはスタジオの拠点ベネズエラの現状から着想を得たのだという。だからキャラクターはフィクションだけどその苦悩とやるせなさは完全に真に迫っている。この件を知ったとき、現実の問題を解決することを目的にしたゲームジャンル「シリアスゲーム」を思い出した。本作もそう分類していいくらい、現実を考えるきっかけを与えてくれる。
そんなことを思う一方で、プレイ中は心が暖まったことが強く印象に残っている。バーに来る客たちは、過酷な現実からいっとき離れて羽を休めに来るわけで、プレイヤーの心境とも合致する。その癒やしの先が酒であり、アニメ的絵作りのノベルゲーであり、猥談好きな美少女アンドロイドであり、上司との百合である、海の向こうからまさに自分とぴったりの感性のゲームが届けられこうして体験できている、その事実に胸を打たれた。このゲームが好きな人とはすぐ友達になれそうな、そういう感じがする。
8: Euro Truck Simulator 2 ── トラック讃歌
シミュレーターは「なっていたかもしれない自分」を妄想してロールプレイするのが楽しいと思う。『電車でGO!』なら運転手に、『Microsoft Flight Simulator』ならパイロットに、そして『Euro Truck Simulator 2』ならトラック運転手になっているパラレルワールドの自分を体験できるというわけだ。
正直このゲームを手に取るまで、ドライブゲームは好きだけどトラックにはまったく興味がなかった。しかしゲーム中のフレーバーテキストから、「この世界ではトラック運転手は誰もが憧れる職業であり、トレーラー運転は無上の喜びである」云々のメッセージを察して、なるほどこの価値観に身を任せてみるのもロールプレイっぽくて楽しいぞと思ったのだった。
ETSはそれに加えて、旅情をかき立てる旅番組のなかを走っているような風情がある。
7: ウィッチャー3 ワイルドハント ── 野心しかない
本作を2周したことが、大人になってから周回プレイをほぼ一切していない自分にとっては快挙に近い。途方もなく巨大な規模のゲームを、無限の野心で開発し切るパワープレイに圧倒されてしまった(このへんは『血と汗とピクセル: 大ヒットゲーム開発者たちの激戦記(Amazon)』に詳しい)。この件で完全にポーランドはゲーム産業の国という印象になった。
ゲーム全体を通して「選択と結果」の巧みさが印象的だった。RPGによくありがちな無意味な水増し選択肢ではなく、自分の下した判断に登場人物たちが無慈悲に翻弄されていく様子がシビアに描かれていた。選択肢が重要なゲームは「チョイス・ドリヴン」とよく表現されるが、本作もまた選択がキモのゲームだし、屈指の面白さだった。
次作『Cyberpunk 2077』の社運をかけた大大大大プロジェクトぶりをみても、このスタジオがとてつもない野心家であることは容易に窺える。『2077』は再々延期で大変なことになってるけど、とにかく信じて待つことしかできない。おれは信じる。
ウィッチャー3 ワイルドハント ゲームオブザイヤーエディション 【CEROレーティング「Z」】 - PS4
- 発売日: 2016/09/01
- メディア: Video Game
6: Gears of War ── TPSがあるじゃないか
ゲームにつきまとう厄介な問題として「酔い」がある。特にFPSが長時間できない。『メダル・オブ・オナー』を酔い止めを飲みながらプレイして耐性がついたかと思いきや、最近『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』で滅茶苦茶に酔ってしまい、その日じゅう床に伏してしまった。そんな自分にはTPSがあるじゃないかと思わせてくれるほど、Gears of Warは抜群におもしろかった。
よかったのは、小隊単位で仲間キャラとダラダラ会話しながらの戦闘。カットシーンでの会話も勿論あるが、そうでない場面の何気ないやりとりが妙に豊富で、男同士の友情を感じていい。あと「プランBは何だ?」「ねぇよそんなもん」に代表される数々の名台詞もね。マップも共闘を意識したデザインになっていて、たとえば二手に分かれるルートで「片方の道でピンチになっているとき別の道から仲間が援護してくれる」といったドラマチックな演出が起こりやすい。
新作が出るたび「いつものギアーズか」と感じてしまうが、それは第1作目の時点で主要なメカニクスがほとんど揃っているからだと思う。そう考えると改めて驚異的な完成度に映る。初めてプレイしたときは、人間離れした筋骨隆々のオッサンたちが物陰からチクチク撃っていくギャップがまず不思議だったし、しかもAボタンで多彩なアクションがとれるお手軽操作がウリと、なんかビジュアルとシステムが一致してない印象を受けたけど、結局カバーシューターとジャンル名がつくほど後世に浸透していったことから、やはりカバーシステムを前提にしたゲームとして先進的であった。
5: BMS界隈(とbeatmania本家)
「これはゲームタイトルじゃないだろ」との声はごもっともだが、自分の血肉になったものとして除外するわけにはいかなかった。
BMSとはbeatmaniaを模した音ゲー、あるいはその楽曲フォーマットのこと。見出しに BMS界隈(とbeatmania本家)
と書いたのは、BMSのほうが出会った順序が先だったから。なんだか歪な状況だが、YouTubeもSoundCloudもなかった*2ときに、BMSを通してあれだけ大量の楽曲に無料でアクセスできたことは、のちの自分に大きな影響を与えたと思う。というかデザイナーになったのだって、BMSについてる映像(BGA)的なものに憧れていたからだ。「思う」どころじゃなく完全に影響されてた。
それと、コミュニティに初めて触れた経験として印象深い。ゲームの面白さの軸のひとつにコミュニティがあるが、BMSの活発さはまさにそれだった。ぶっちゃけ僕はただROMっているだけだったけど、当時好きだったBMS作家がいまもアーティストとして活躍しているのを見かけると、ふと思い出したりする。
本家のアーケードで一番遊んでいた時期はIIDXREDあたりだったと思います。
4: ソニックアドベンチャー ── 街歩きが楽しいソニック
DCの名作として「ソニックアドベンチャー2」が挙がることはよくある。推したいのは「1」のほう。
「ソニックアドベンチャー1」は、6人のプレイアブルキャラクターの群像劇であり、キャラクターごとに独立したゲームシステムとストーリーがある幕の内弁当のような作品だった。さらにミニゲームとしてビジュアルメモリ連動の育成ゲーがあったり、あるキャラはなぜか全編にわたって釣りゲー(ミニゲームではなく釣りがメインのゲームシステム)だったりと、ちょっと盛り込みすぎじゃないのと面食らう。ただ、これは憶測だけど「次世代機ドリームキャストではあんなこともこんなことも実現できるぞ」とあれこれアイデアが爆発した結果なのかなと想像するに、そのサービス精神がうれしい。
それに加えて「1」を推す最大の理由が、探索パートの占める割合が多いことだ。純粋なアクションゲームとしては不要と判断されたのか、その後のシリーズではカットされてしまった。だが、ステージ間の繋ぎをプレイヤーが自分で探索することで、単に1面から2面に即切り替わるよりずっとスケールがでかく感じられる効果があった。今の感覚だと探索パートのマップはそこまで広くないが、当時としては充分巨大な世界に感じられた。探索では都市やジャングルなどが写実的に描かれ、NPCもリアルな等身。そこに普通にソニックが溶け込んでる不思議な光景をお目にかかれるが、そういう変に子供っぽくない絵作りと、ハード路線のストーリーがとても相性良かった。こういうシリアスなソニックをやりたい。ラスボスがアツくて何度もプレイしました。
3: シェンムー I&II ── 旅をするならこんなふうに
プレイした者は価値観が変わってしまうと言われる(言われてない)革新的なタイトルだった『シェンムー』。僕はというと、子供心に「一人旅って、やってもいいものなんだ」と思った記憶がある。
主人公が生まれた土地を離れて冒険する話、と言ってしまえば、それまでのゲームでもよくある定番の話だった。しかしシェンムーで薄汚れた雑踏を歩き回った日々、お小遣いを握りしめてガチャガチャを回し続けた日々、朝っぱらから本の虫干しを延々手伝わされて「なんでこんなことやってるんだろう」と思った日々は、どのゲームと比べても、あまりにも現実に近かった。
べつに旅慣れてるわけじゃないが、未だに一人旅するときは芭月涼の姿が思い浮かぶ。
2: バーンアウト3 ── 当たり屋無双
「思い切り体当たりがしたい」という本能的欲求を叶えるためにつくられたゲーム。
よく考えると「モノをぶつける」遊びは多い。ビリヤード、ボウリングなど球技の多くは当てはまるし、かつて遊んだビーダマンやベイブレードもそう。ぶつけたときの爽快感や挙動の意外さが中毒性高いのだろう。では、リアルな車が車に衝突したら?
今作は危険走行をするとブーストゲージが貯まって速く走れる。一番効率よくゲージを貯める方法が「敵車に体当たりしてコース外に弾き飛ばす」なので、前を走る車を見かけたら当たり屋よろしく片っ端から体当たりを仕掛けていくゲームプレイになる。むしろ敵車はプレイヤーにバッタバッタと吹っ飛ばされるために走っていると言ってもよく、ひとたびガードレールにぶつけてあげれば派手な演出とともに気前よくクラッシュしてくれる。やられ役の真髄を見た気持ちだ。このように充分すぎるバカゲーだが、日本語版はトンチキな技名がデカデカと表示されコクが一層深まっている。
さっきからバカゲー連呼しているがスピード感は格別で、熱中できるバカゲーとして大変貴重。事実ぼくはベストドライブゲームを訊かれたら本作を選ぶ。
1: ジェットセットラジオフューチャー ── ベスト・オブ・ザ・ベスト
ベスト・オブ・ザ・ベスト。
良いところをちゃんと文章に組み立てられる自信がないので箇条書きで書くとこのようになる。「インラインスケートがトリックを競う目的よりも通常の移動手段として扱われていること」「グラインドで縦横無尽に滑り回れるよう街全体がデザインされており、これと渡り合える作品が未だ見つからないこと*3」「セルシェーディング(トゥーンシェーディング)を採用した初期のタイトルで、かつて見たことのないビジュアルだったこと*4」1作目より2作目の『フューチャー』を推している内訳は、楽曲の豊富さ、マップの広大さ、コマンド簡略化や移動速度強化によるテンポのよさが1作目を上回っているからだ。要するに「歴史的傑作である1作目を上回ってるのは続編だけ」ということが言いたい。さらに他社製ハードであるXboxのロンチタイトルだったにもかかわらずこれ、という点も忘れてはならない。
僕含めほとんどのプレイヤーにとって「グラインド」は現実で一度もやったことのない移動方法だが、JSRでは何不自由なく思い通りにグラインドできる。別にゲーム内でグラインドできる場所が露骨に光ったり目印があるわけでもないし、マップには実在の東京をモチーフにした猥雑なオブジェクトが溢れている。にもかかわらず、画面をパッと見ただけで「グラインドできそうなところでグラインドできる」のは地味に凄い。もし逆に「グラインドできるかなと思って建物の縁に近づいたのに、できるポイントではなくて落下死した」だったら一転して悲惨なものになっていたはず。
本作が動くのはXboxとXbox360のみである。前作『JSR』はスマホやPCにガンガン移植されたにもかかわらず、『JSRF』はそのような話は聞かない。この傑作を遊べる手段が現行機に存在しないのは残念極まりない。
おいおいTESやGTAやHaloがどこにもないぞとか、ギャルゲー黄金時代の名作たちはどうなったのとか、明らかにセガに偏ってるとか、いろいろ思うところがあるかと思う。実際これは自分とゲームとの関係を考える目的で書いたもので、100パーセント私見で選定したしフェアかどうかは意図的に無視した。結果が偏ってるのも、遊んできたジャンルやメーカーがすでに偏っているわけで、さもありなんという感じ。
最後に、記事をまとめているうちにいくつか発見があった。
まず、プレイ時間の長さと思い入れの強さは必ずしも一致しない。プレイ時間で集計するとぶっちぎりのトップは『モンスターハンターポータブル』だが、だからといって「これが自分の血肉となった10本だ」と言えるかは別の話ということ。逆に『VA-11 Hall-A』のように短くても強烈な印象を残すゲームもある。
次に、発売数年以内の新しい作品と、古い名作は候補に挙がりづらい。「ある作品が自分をどう変えたか」は時間が経って振り返ったときに初めて気づくことも多いので、ある程度の期間が必要。また、自分がゲームを遊び始めたファミコン・スーパーファミコン・メガドライブあたりの古い作品が挙がりづらいのは、「ゲームを買うこと・遊ぶこと」にそこまで自覚的でなかったからだと思う*5。僕の場合、自分の遊びたいゲームを自分のお小遣いで買うようになったのがドリームキャストからであり、スイートスポットがDC〜Xbox360ごろの作品群にある。
まとめるの大変だったけど意外とスッキリした。
*1:『VA-11 Hall-A』はサイバーパンク・バーテンダー・アクションを標榜しているが、明らかに小島監督作品をもじっているだけで、大方のプレイヤーはビジュアルノベルとみなすだろう
*2:すでにあったのかもしれないけど存在を知らなかった
*3:グラインドを全面的に取り入れた作品に『サンセットオーバードライブ』がある。のちに『Marvel's Spider-Man』を手掛けるInsomniac Gamesの良作で、途中で方向転換できるなど新たなギミックが盛り込まれていて楽しかったものの、それはTPSと組み合わせたときに方向転換できないと不便だったからだと思う。素材の味のJSR、他要素と混ざった『サンセット〜』という認識
*4:JSRが始祖ではないが、少なくともトゥーンシェーディングの名は一般に知られていなかった
*5:この意見には同意できない人もいると思う(たとえば、最初に遊んだゲームが一番記憶に残っているとか)。あくまで自分の体験としてはそうではなかっただけ