学生の頃、もし自分が一人暮らしを始めたら、たちまち火事で家を燃やしてしまうだろうという根拠のない妄想になぜか取り憑かれていた。一人暮らしなど到底無理だと思い込んでいて、結局実家から片道2時間半かけて大学に通っていた。通学時間でやったことはモンスターハンターポータブルとTumblrのReblogくらいで、もっとなんかやることなかったのかと思わなくもない。
大学卒業後、埼玉を離れ京都に住むことになった。引っ越し数日前に東日本大震災が起こり、全国的なガソリン買い溜め騒動が起こっていた。引越し業者のかたに聞いたら、やっぱり早朝からガソリンスタンドに並んで、なんとか確保してくれたらしい。荷物はそれで送れたけど、心配性だからPCのハードディスク4台だけは自分で抱えて新幹線で持って行った。
不動産屋から鍵を貰い、荷降ろしが済んだ部屋で、電気ケトルを沸かしてブレンディのスティックカフェオレを飲んだ。どうしてこんなことを覚えているかというと、実家にいた頃は自分でスティックコーヒーなど買ったことがなかったからだ。
それから、1週間かけて家具や家電を買い揃えたり、寝てる間に換気扇から蜂が入ってきて飛び起きたり、駐輪場に屋根がなくて自転車が買ったそばから錆びついてきたり、ニトリの激安ぺらぺら布団で腰を痛めて後悔したりしたけど、スティックコーヒーのことがいちばん記憶に残っている。一人暮らしが始まった実感があった。
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