SANOGRAPHIX Blog

京都を拠点に活動する佐野章核 (sanographix) の個人ブログ。日記、webデザイン、読書、写真など。

【百合中心】Steamセールにかこつけてノベルゲーを4作連続で遊ぶ

Image: Highway Blossoms

あけましておめでとうございます(遅い)。Steam旧正月セールも終了した今日この頃いかがお過ごしでしょうか。Steamのウィッシュリストもおおかた買い尽くしてしまい、今回のセールはなにかジャンルを決めてディグっていこうという趣旨の表題です。

Highway Blossoms

ストアページに燦然と輝く「圧倒的に好評」を信じたところ正解だった。「2人の少女が、キャンピングカーで砂漠に眠るお宝探しの旅に出る」ってな具合のアメリカン・ロードムービーな話を、美少女ゲームライクなキャラ達が繰り広げる。ライバルとの小競り合いシーンがいかにもアメリカンな「ラスベガスでカジノ勝負」だったりして、ビジュアルノベルが現地の味にうまく料理された感じが新鮮。というか、いまは冷静に感想を書けてるけど、プレイ中はそれどころではなく終始「良い……」ばかり思っていた気がする。この子たちずっと同じキャンピングカーで寝泊まりするんですよ……そりゃ友情もアレコレも芽生えますよね……。

左側の子が主人公。右のふわふわガールがエンストしているのを助けるところから物語が始まる

本作は日本語化の気配がないので、英語版でプレイした。当方英語には自信がなく、完璧に読もうとすると途端に苦痛になるだろうから大筋を追えればヨシと思って臨むことにした。おれは単に百合が読みたいだけなんだ……。辞書を引きながらのプレイで、途中怪しい箇所もあったものの、心配していたよりは大した苦痛ではなかった。「旅を通して互いに惹かれ合いつつ、主人公が祖父を亡くしたショックと向き合う」王道のストーリー展開だったのと、キャラクター達の軽妙な掛け合いが読み進める大きなモチベーションになったからだ。少なくともセリフの意味さえ追えていれば、理解が追いつかないことはなかった。ビジュアルノベルの機能上、バックログをいつでも参照できるのも理解の大きな手助けになる。

そして、セリフにボイスが入っていることにこれほど感謝したことはなかった。キャラクターが怒ってるのか喜んでるのか、それとも皮肉で言ってるのか、そうした微妙なニュアンスの情報量が単に文字だけで読むのとはまるで違う。ボイスは偉大だ。ボイスは最近の無料アップデートで追加されたらしく、最初からボイス付きだったのではないかと思うほどの熱演で、非常に高品質。キャラにもよく合っている。

あとSteamゲームのご多分に漏れず、差分パッチが公式サイトで配布されている。なんのパッチかは書かなくてもわかるよな!

Fox Hime Zero

旧正月セールだったので中国っぽいゲームを遊んでみた。シリーズ初見だが、前作の前日譚とのことなので問題なかった。

自然科学を専攻している学生の主人公は、山小屋で研究生活を送っているところに少女と出会う

作中で舞台や時代設定が語られてなかったはずなので、本当に中国っぽいかは正直謎なものの、随所に異国情緒を感じさせるシーンがあった。なかでも「彼女に服をプレゼントするために仕立屋に行く」シーンがあり、私服買うのにオーダーメイドってところが妙に記憶に残っている。

普通に読んでプレイ時間は1時間半ほど。そのなかに、出会いからとある試練を乗り越えるまでの起承転結が一通り入ってるので、フルプライスのギャルゲーと比較すると目の回るような勢いで話が進む。アニメ映画の総集編を見ているかのような超スピードに最初は面食らったが、よく考えたら週末サクッと遊ぶぶんにはそのくらいコンパクトなほうが嬉しいのであった。値段も安いし。短いプレイ時間のなかに食べるシーンがなぜか多くて腹が減る。

大事なことを書き忘れていた。この記事のなかで唯一百合ではない。ないが、狐耳ヒロインがLive2Dで耳や尻尾を動かすさまがとにかくかわいい。主要キャラは日本語ボイスも入っており完璧。

Wolf Tails

記事中でケモミミが連続しているが、本作は狼耳です。二人の半狼少女と人間主人公との心温まる異種間恋愛もの。

社会のしがらみから逃れるため山奥で暮らしている主人公は、小屋の前で凍えていた少女を保護する。こんな薄い服着るなよ、というツッコミは野暮である

ちょっと珍しいのが、主人公の性別が選べるシステム。女性を選んだ場合のみ百合ゲーになる。作中の演出もちゃんと性別に合わせて変化する。ということで、もちろん女性主人公を選んだ。

これも未ローカライズだった。 Highway Blossoms で一応なんとか話は追えたので、その勢いで(あとは気合で)読んだ。百合パワーは偉大である。正しくシーンが読み取れていない可能性があるうえでの感想だがご容赦いただきたい。

基本はラブコメ・狼少女と人間の生活とのギャップを利用したドタバタで、安心して見ていられる。というか、捻りのある展開だと読めずに投げ出してしまっていただろうから、お約束展開が逆にうれしい。料理上手で献身的なMirariと、わかりやすいツンデレなFuyu、どちらのルートもそれぞれ魅力的に描かれている。ちなみに実績は全ルート読めばコンプできる。

最近カスタムオーダーメイドのキャラメイク等で自分の好みに自覚的になっていて、MirariやFuyuは結構そこから離れたデザインなんだけど、本作を経た結果、自分の嗜好のほうを再考せざるを得ない。チャームポイントの太眉いいね……。ストアのサムネイルに惹かれて買ったタイトルなだけに、全体的なビジュアル面は水彩・厚塗りっぽい画風で好みだ。立ち絵の時点で結構きわどい服を着ているものの、画風のせいかそこまでいかがわしさは感じない。

Butterfly Soup

最後のはSteamセールとはなんの関係もない(itch.ioで公開されている)が、各所で絶賛されており、確かに今まで見たことのない類のゲームだったので紹介したい。

よくあるノベルゲーと思いきや、アジア系アメリカ人コミュニティを舞台に、インド系少女と韓国系少女の恋愛が描かれる。この設定が他に類を見なくて興味を惹かれた。そして、扱うテーマが高校生の学生生活や懐事情はもちろん、毒親問題、マイノリティの微妙な生きづらさといったシリアスな題材も含んでおり、作者の実体験かと勘ぐるほどの圧倒的な説得力がある。

リアリティをより強くしているのが、端々で登場するオタクカルチャー。アニメや漫画のキャラクターや固有名詞が、一部伏せ字ではあるが会話やチャットに堂々と登場するのだ。最初はその堂々さ具合にかなり驚いたものの、そうしたオタク嗜好が、同じ趣味を愛する日本のプレイヤーと遠く離れた彼女らを地続きにする、精神的な架け橋になっていることに気づき、おかげで思いがけず自分が励まされることになった。

なかでも気に入ってるエピソードが、幼少期の回想シーン。公園で女の子が男の子集団の遊びに混ぜてもらう場面で、「普段どんなゲームで遊ぶのか言ってみろ」と高圧的に男の子が尋ねると『ソニックアドベンチャー2』と女の子が答える。すると途端に男の子達は「なら大丈夫だな!」と掌を返して仲間に迎え入れる。……この仲間意識! 実在のゲームタイトルだからこそリアルに伝わるし、このシーンでソニックの名前を出す必然性がある。

繊細で微妙なテーマを描きつつ、あくまで主眼は仲間との友情や愛情。あまり重くなりすぎないビジュアルで包んで爽やかな読後感に繋げる、このバランス感覚が絶妙。百合が好きでもそうでなくても遊んでください。任意の額を支払うタイプのゲームなので無料でも遊べます。

(追記)Heart of the Woods

こっちに書きました。

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ワンモア百合

去年遊んだので記事には入れなかったものの、SeaBedが最高の社会人百合でめっちゃ良いです。80年代の舞台描写、特に小道具ひとつひとつの描写が異常に細かく、昔のことをよくここまで新鮮に書けるなと驚くばかり。シナリオはとても長く、淡々とした主人公の性格もあって起伏が少ないが、終盤怒涛の畳み掛けの爆発力がもの凄いことになってるので、ぜひ最後までプレイしてほしい。